映画「怪物」(ネタバレあるかも)

  最近、面白そうな映画があったら水曜日に行って観ています。この映画も是枝監督なら結構深いテーマのガッツリとした作品だろうとは思っていました。その重そうな雰囲気は不元気な今の私には、あまり惹かれなかったのですが、水曜日のミッションとして観に行ってみました。前知識なく観たので観た後の衝撃が大きく、この映画について考えるのはしばらく置いておいて、一旦冷ましてから考えました。

 

 ところで、映画館に行ったらなんとなく雰囲気でポップコーンなどを持って入りたい気持ちが湧き上がってきてちょこっと買ってしまうのですが、最近コマーシャル時間が少なくなったのか会場時間がギリギリなのか理由はわかりませんが、本編が始まるまでに食べ終わらない問題が発生しています。どうなんでしょう。

 

 映画の話に戻ると、一つの事柄なのに関係者それぞれの立場から見えるストーリー展開が全く異なっていて、それによって客観的に見ている私の感じ方も全然違ってきて、とても興味深かったです。現実ではどれか一つの立場で固定されてしまうので、理屈としては色々他者の立場も理解しているつもりでも甘かったなーと恐ろしくなりました。

 

 最初のスタートは主人公ミナトの母親シオリの視点から見えるストーリー。なので担任のホリはほとんどサイコパス教員に見えます。「なんなんだこの教員は!」トラブルの種になる事柄にも気付かずヤバすぎる。学校の態度ものらりくらりとして謝るだけ。責任逃れが酷く腐ってる、、、と思いましたよ。学校側から見たら、シオリはモンスターペアレントなんでしょう。一方ホリから見ると、あれよあれよという間に問題教員に仕立て上げられて炎上し事実ではないストーリーが一人歩きし、窮地に追い込まれる。でも、シオリもホリも真実とはほど遠い。子どもたちには子どもたちの世界があり、大人には介入できない部分があるわけです。それぞれの立場からのストーリー展開がとても上手く重なり合っていて、とてもよくできています。

 

 これは映画なので、問題だけを浮き彫りにして少々誇張して表現しても成立しているけれど、これが実際ならばそれぞれの立場で追い詰められた人はそのまま死を選んでしまう可能性もあるようにも感じ、とても恐ろしい気持ちがじわじわと広がりました。自分にとって事実であることも、相手側がどう解釈しているかはわからないということを改めて自分自身への教訓として刻んでおきたいと思います。わかっているつもりでも全然わかっちゃいないんですね。自分のことだってろくにわかっちゃいないのに、です。

 

 安藤サクラさんの善とも悪ともつかないような微妙な演技や田中裕子さんの何かを想像させる含みのある表情や動きやセリフ、主人公の子役二人の演技力のすごさなども印象が強くしばらくは頭から離れないほどでした。しかし、ラストはよくわからないままでしたが、もはやそれはどうでもいいことのようにも感じました。